記憶に新しい2024年のお正月、能登半島で発生した大規模な地震は、地域に大きな影響を及ぼしました。この地震は、震源地に近い地域だけでなく、広範囲にわたって交通網やインフラに深刻な被害をもたらし、多くの住民が困難な状況に直面しました。地震の発生から9か月が経ちますが、現在も仮設住宅などに行けず、避難所で生活している方が40名(8/19時点)ほどおられます。
災害大国日本は現在、災害は忘れたころにやってくる時代から、忘れる前にやってくる時代に突入しています。
大きな地震をうけ、看護協会や各訪問看護ステーションで災害対策マニュアルの作成が行われていますが、実際の地震では予期せぬ事態も発生します。能登半島地震では、訪問看護師が通常の業務を続けることが困難な状況にあったことが報告されています。
例えば、交通網の遮断です。地震によって道路が崩れたり、交通機関が運行停止になったため、訪問看護師が利用者さまのご自宅に到達することが物理的に不可能となりました。特に、山間部や交通アクセスが限られている地域では、その影響が顕著でした。
通信手段の制限もありました。地震による土砂崩れや倒木などで通信インフラが損傷し、電話やインターネットが利用できない状況が発生しました。このため、訪問看護師が利用者さまやご家族と連絡を取ることが困難となり、適切な指示や情報を提供することが難しくなりました。
訪問先の被害もあります。一部の利用者さま宅では、地震の影響で建物が損傷し、訪問看護が行える状態ではなくなっていました。これにより、物理的な障害が発生し、必要なケアを提供するための条件が整わなかったのです。
また、地震の影響は、訪問看護師・リハビリスタッフ自身にも大きな影響を及ぼしました。
地震の影響で、スタッフが一時的に不足し、訪問看護の体制が崩れることとなりました。スタッフ自身や家族の安全を確保するために、家庭内の対応や避難を優先する必要があったのです。災害時に大切なことは、まずは自身の安全の確保といわれています。自分自身が安全でなければ、他者を助けることはできません。例えば、避難所で他の人を支援しようとした結果、自分が危険な状況に陥ると、逆に支援が必要な立場になってしまいます。自分が無事であれば、冷静に行動し、他者への支援を続けることができます。また、守る家庭が安全であれば、次は他の人への支援と向きます。
このような緊急事態において、訪問看護師が利用者さま宅への訪問を行うことができない場合、利用者さま自身が安全を確保し、自立して対応していただく必要があることを痛感するとともに、こうした状況に直面することで、どんなに準備を整えていても、予期せぬ事態が発生する可能性があることを再認識しました。
利用者さま自身での準備と対応が重要
最近も頻発する地震への備えは、利用者さま自身にもお願いです。
災害時には、訪問看護師が利用者さま宅に到達することが難しくなる場合があります。そのため、利用者さま自身が自分の安全を確保し、必要な準備を整えておくことが非常に重要です。緊急時持ち出し袋や連絡手段、家庭内での安全確認、避難場所確認など日ごろからされているかと思いますが、それ以外にも以下の点を日頃から意識し、準備を進めておきましょう。
【 車のガソリンを常に満タンに 】
車のガソリンは常に満タンにしておくことをお勧めします。災害時には、道路状況や交通渋滞が発生する可能性があるため、ガソリンが不足していると避難や移動が困難になります。満タンにしておくことで、もしもの時には車から電源を確保したり、避難することも可能です。
【 ご家庭での医療品の備蓄は1か月分 】
医療品は、少なくとも1か月分を備蓄しておくことを推奨します。災害時には交通インフラが遮断される可能性があり、医療品の供給が難しくなります。家にあるもので代用できそうなものがないか日ごろから考えておくのも良いでしょう。
当社としても備蓄を進め、万全の体制を整えてまいりますが、皆様自身の安全確保のためにも、上記の準備をぜひご確認ください。日頃からの備えが、安心して過ごすための第一歩となります。